私が通ってきたFPSの道 その3 『コール・オブ・デューティ 4 モダン・ウォーフェア』

コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア - PS3

コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア - PS3

 2007年12月に、プレイステーション3Xbox360用のゲームソフトとして発売されました。廉価版が今年の9月にスクウェアエニックスから発売になっていて、容易に入手が可能です。タイトルのとおり『コール・オブ・デューティ』シリーズの第4作目ですが、シリーズと言っても話の内容には繋がりがないので、このシリーズが初めてという人でも遊べます。実際、いま最も人気があり評価の高いFPSと言うとこのゲームで、これが初めてのFPSだという人も少なくないようです。


 舞台は、現代です。中東の国で政権転覆が起こり、親欧米路線の大統領が処刑され、強烈な反米主義が台頭します。主人公はアメリカ合衆国とイギリスの兵士2人で、それぞれの立場から、この事件の裏に潜む世界的な陰謀に立ち向かいます。分類としては「現代モノ」になり、出て来る武器などもほぼ現実に即したのもののようです。

私の体験

 最初に言っておきますと、『Halo』以降このゲームが出るまで他のFPSをやらなかった、と言うわけではありません。その間にやった他のFPSがつまらなかった、と言うわけでもありません。私が通ってきたFPSの「道」、という企画なら本来は自分が遊んだ順番で進めていくべきで、最初は確かにそのつもりだったのですが、最初の2タイトルの記事を書いたところで、自分なりにそれぞれのゲームの内容や評価のバランスを考えて、今回紹介する3つ目にこれを持って来ました。


 『メダル・オブ・オナー 史上最大の作戦』を取り上げた「私が通ってきたFPSの道 その1」でも書きましたが、海外のアクションゲームは、普通ならイベント・ムービーで見せそうなシーンでも、プレイヤーがキャラクタを操作できる状態で見せる演出をよくします。私はゲーム開発者でも評論家でもありませんので、詳しいことは分かりませんが、そうすることによって、プレイヤーがその出来事をその場で体験している当事者のように感じさせ、雰囲気を盛り上げようとしているのかなと、自分では捉えています。
 このゲームを遊ぶまでにもいろいろなゲームをやって、そう言った「当事者のように感じさせる」見せ方には慣れたつもりではいましたが、まだまだでした。ゲームの序盤、アメリカ合衆国海兵隊が、反米テロの首謀者を捕らえるために大規模な作戦を開始します。このミッションは、まず、海の上を飛んでいるヘリコプターの中に主人公がいるところから始まるのですね。そして海岸へと接近し、アメリカ軍を迎え撃つテロリストの放つ攻撃を掻い潜って市街地に入り込み、ロープを使って降下する。ゲーム本編自体はそこから開始なのですが、まだヘリコプターが飛んでる最中でも、主人公の視点を動かしたり、持っている銃を撃つことが出来てしまうのです。さすがに、移動してヘリコプターから落ちるなんてことは出来ないようになっていますが、それ以外のことなら、できる。
 意味はないんです。ヘリコプターの開け放した扉からテロリストの乗ったジープが見えたりしますし、それを撃つことも出来ますが、別に撃つ必要のあるものではありません。敵を倒さなきゃいけなくなるのは、ヘリコプターを降りてから。でも、その前の時点でもう、キャラクタを動かせるようになっているんですね。


 これが、私は好きです。別にそうしなきゃいけないわけでもないのに、なっている。いや、本当に何の意味も生み出さないわけではないんです。
 これから敵のウジャウジャいる街中へ降下して行く、という場面ですからね。緊張します。プレイヤーも緊張していますし、ゲーム中の主人公さんもきっと緊張しているでしょう。その緊張をプレイヤーと主人公が共有し、そして同化していく、そのための時間。これが「ヘリコプターの中」なのだと思います。本番直前、舞台袖での最後の待ち。心を落ち着けて、息を整える。もうすぐ。これから本番。…………よし、行くぞ! これなのだと、思います。
 銃は撃てても、攻撃することに意味はない。操作のきかないイベント・ムービーで見せても、大きな違いはないのかもしれません。FPS以外のジャンルのアクションなら、それで良かったでしょう。でもFPSでは、この「違い」は、かなり重要なことだと、私は思います。FPSの最も大事なポイントと言うのは、その名前のとおり一人称視点であること、ゲームを遊んでいるプレイヤーとゲームの中の主人公が、同じ視点を共有していると言うことです。それはどういう効果を生み出すのかと言えば、ゲームへの没入感を高めると言うこと。プレイヤーが主人公を操るのではなく、主人公そのものになる。敵の猛攻を受けて前に進めず怯んでいるのも、すぐ隣で仲間が撃たれたのに身動き一つとれず助けることが出来ないのも、自分なんです。「主人公たちがピンチだ!」じゃない、「自分たちがピンチだ!」なんです。これがFPSの特徴、FPSの持つ醍醐味の一つだと、私は思います。


 念のために補足しておきましょう。FPSにもいろいろあります。『コール・オブ・デューティ』シリーズは、作品の特徴として「主人公は、ただの一兵士」というテーマを掲げてます。そうでないFPSもあります。日本のRPGやアクションゲームのように、主人公がヒーローとしてはっきり設定されているものもあります。
 例えば『Halo』の主人公マスターチーフがそうです。この場合、もちろんFPSですから、一人称視点で進むゲームですから、他のジャンルに比べると没入感はあります。しかし主人公がただの一兵士なのとスーパーヒーローなのとでは、プレイヤーにとって入り込みやすさにはちょっと差がある、というのは、想像してもらえると思います。その違いは、どういうところから来るのか。『Halo』には、上で書いた一人称視点での「ヘリコプター」のようなシーンはありません。逆に、一般的なゲームのイベント・ムービーのように、三人称視点のカメラワークで主人公マスターチーフを見せるようになっているのです。主人公を独立したキャラクタとしてしっかりと、かっこよく見せることで、雰囲気を盛り上げるのですね。「主人公たちがピンチだ!」でもなく、「自分たちがピンチだ!」でもなく、「自分たちの大好きなあのマスターチーフがピンチだ!」と言うわけです。同じFPSでも、少しずつ違いがあるのです。
 でも、だからと言って、どちらがどちらに劣っていて面白くない、と言うわけではありません。人によって好みの差はあっても、ゲーム自体の優劣ではありません。そこは忘れないようにしてください。私はどちらも大好きですよ。

シリーズの展開

 このシリーズは、同じタイトル、似たタイトルでも機種によって内容が違うことがあり、またシリーズが進むにつれて番号の付いていない作品も出てきているため、少し複雑です。
 まず、プレイステーション2Xboxで、『コール・オブ・デューティ ファイネスト・アワー』が出ています。そして、プレイステーション2で『コール・オブ・デューティ 2 ビッグ・レッド・ワン』が、Xbox360で『コール・オブ・デューティ 2』があります。この2本は、タイトルは似ていますが、内容が違います。『コール・オブ・デューティ 3』は、プレイステーション3Xbox360で発売されました。この第3作以降なら、中古で探せば購入は難しくないのではないでしょうか。また、『コール・オブ・デューティ 4』はニンテンドーDSでも発売されましたが、ゲームの内容は大きく違うので、注意しましょう。
 シリーズの最新作は、この『コール・オブ・デューティ 4 モダン・ウォーフェア』の続編にあたる『コール・オブ・デューティ モダン・ウォーフェア 2』が、12月10日にプレイステーション3Xbox360用ソフトとして、スクウェアエニックスから発売予定です。いま世界で最も多くの人に発売が待ち望まれている新作ゲームソフトと言ってもいいでしょう。続編ですから世界観は同じですが、話の内容は深く繋がってはいないようなので、一番新しくて一番期待されているFPSをやりたいという方は、『コール・オブ・デューティ モダン・ウォーフェア 2』の購入をお薦めします。ただし、まだ出ていませんので、内容については保証はしません。

コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2 - PS3

コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2 - PS3

余計なことかもしれませんが、少し

 書くべきかどうか迷ったのですが、書きます。『コール・オブ・デューティ 4 モダン・ウォーフェア』は、いま最も人気のあるFPSです。比較的新しいものの中から他人に薦めるFPSを選ぶとしたらどれか、ということで言えば、海外のみならずおそらく日本でも、これを選ぶ人が最も多いでしょう。ただ、ひとつ問題があるのです。
 このゲームは海外で開発されました。当然、内容はすべて英語です。日本で出る場合には、メニュー画面を日本語表示にして、ゲーム中のセリフには字幕をつけたり、さらに吹替をしたりもします。どこまでやるかはゲームによって違い、このゲームの場合は、音声は英語のままで、日本語の字幕がつけられました。
 が、その字幕の質が、悪いのです。機械的な直訳が多く、誤字もあります。せっかくの素晴らしいゲームなのに、と日本のFPSユーザーを泣かせ、大いに不評を買いました。ゲームを遊ぶ上で大きな問題になるわけではありません。気にしないで遊んでいる人もいます。ちょっと不自然な日本語というだけですし、そもそも軍事用語などをよく知らない人にとっては、すべて正確に訳をされても結局よく分からない、ということもあります。ただ、このゲームのその質の悪い訳を見て、他の海外のゲームの日本訳も同じように粗悪であるとは、勘違いされたくないのです。そこは、分かっていただきたいと思います。
 なお、いま日本版を発売しているのはスクウェア・エニックスですが、元々はアクティビジョンと言う会社が日本版を出していました。その会社が解散して、スクウェア・エニックスが後を引き継いだのです。ですから、この字幕の件についての非はスクウェアエニックスにはないということも、はっきり書いておきたいと思います。

ゲームの映像紹介

 今回もまた、YouTubeで検索して見つかったものを紹介します。できれば日本版のものが良かったのですが、見つからなかったので英語版です。上で紹介したヘリコプターのシーンですので、日本語がなくても内容は分かると思います。映像がちょっとぼやけているのが残念ですが、いくつか見て、それでもこの動画が一番ゲームを分かりやすく見られるように思ったので、これにしました。実際のゲームは、もっとはっきりとした、とてもきれいな映像です。気になる人は、自分で遊んで確かめてみてください。

Call of Duty 4: Charlie Don't Surf part 1 (regular diff)