天井が見えて来たXbox360 & Wiiと、真価を見せ始めたプレイステーション3

 E3で、カンファレンスでは触れられなかったのに、その後のプレスブリーフィングで発表されたというXbox360ソフトをダウンロード販売するGames on Demandを聞いたとき、さいしょに思ったのは、まぁそのときは冗談半分でもあったのだけど、「ああ、海外でもそろそろDVD1枚に収まらないゲームが出てくることがほぼ確定したので、入替えを無くすためにディスクレスで遊べる環境を提供しなきゃいけない、ということになったのかな」だったわけですよ。
 そしたら早速、本当に、「『Forza 3』は2枚組み」というニュースが出て来て、ぎゃあ、ていうね。

 ちなみに、既にそのちょっと前に、『Halo 3 : ODST』も、『Halo 3』と共通のマルチプレイ部分は別ディスクで提供と言う話が実はチラッと出てたりするのだけど(不思議と、あまり大きく取り上げられてないんだけど。あくまでE3デモバージョンでは別ディスクだったとかいうだけの話だったのか。はて)、とりあえずファーストパーティーのタイトルからってのは救いですか。いやそれで誰が何から救われるのか知らんですが。
 海外のサードパーティー・タイトルはマルチプラットフォームのゲームが多いので、ブルーレイを採用しているプレイステーション3とのマルチの場合、ディスク容量の違いって結構大きかったんじゃないかと思うんですよね。その辺からの不満や突き上げも既にそれなりにあったはずだと思うんですが、ようやくと言った感じですか。
 でも問題はこれからですよね。それが分かってるから、最初の複数枚組は(最初と言っても、あくまで発表がであって、最初に発売になるかは分からないけどね)『Halo 3 : ODST』と『Forza 3』というファースト・タイトルにしたんでしょうが、この2枚は、一応それなりに理屈はつけてある。『Halo 3 : ODST』は『Halo 3』との共通マルチプレイ部部を別ディスク、『Forza 3』はコースと車種のデータだけ別ディスク。一応、本当に一応ですけども、本編は本編でちゃんと1枚に確保してあるという形なわけですよ。でも、そんなのずっと持つわけがない。いずれ、本編が複数枚に分割されたゲームが出てくることになる。

ディスク容量の問題を抱えるXbox360

 考えてください。FPSのシングルプレイ・モードを遊んでですね。一回はクリアしたとしましょう。1周目なら、最初のステージから順繰りにやってるから、途中で一度くらいディスク入れ替えがあっても、それくらいは別によかった。問題は、一度クリアした後のステージセレクトですよ。好きなステージを選んでそこだけもう1回遊ぼうって時に、そのたびにディスク入れ替えさせられるようになったら、結構つらいですよ。「そんなことないよ」と思うかもしれないけど、いや実際にやったらつらい。プレイステーションで出ていた『エースコンバット 3』のミッションシミュレーターで、よぅく思い知った。当時はディスク複数枚なんて当たり前。3枚4枚どころか、CD6枚組とかいうのもあった気がします。その中では『エースコンバット 3』の2枚組なんて少ないほうですけども、それでも、ミッション選んでディスク入れ替えさせられるのは億劫だなと思いましたよ。
 シングルじゃ分かりづらいなら、マルチプレイにしましょうか。もっと酷いですよね。極端ですけども、例えばマップによってディスク入れ替えさせられたら。もうゲームやってられんでしょう。入れ替えが必要ないような、いつも決まった数種のマップでしか対戦しなくなる。このままだと、いずれそうなるわけですよ。


 何がしか解決する策は、ないわけじゃない。ディスクレスで遊べる環境を作ればいい。今年の夏か秋から(記事によって微妙に違うんだがどういうことなんだ)サービスが開始されるダウンロード。去年のアップデートで追加されたインストール。インストールは今は複数枚組だとそれぞそれのディスクの認証が要るので入れ替えがあるけど、それは、セキュリティの面からいうと難しいことだろうが、MSさえ折れれば1枚で認証できるようにできないわけじゃない。
 問題は、どちらの解決も「ユーザーがそれをできる環境を持っていれば」というものであって、当然それがないユーザーもいる。HDD無しモデルのXbox360を今までずっと売ってきて、今も売ってるからね。それに、例えば俺はインターネット環境があって接続しているし、120GB HDDも使っているから、ダウンロードサービスが始まればそれを利用することが出来る(Xbo LiveアーケードやXboxラシックスといった前例を考えると、Games on Demandも日本での展開はまともには期待できないけど)。だけど、マルチプレイで対戦相手の一人がディスクを使っていて、使用マップによってディスクの入れ替えが必要になるみたいな状況だと、その人がディスクを入れ替えるのをこっちも待たなきゃいけなくなるわけだ。自分自身は入れ替えの手間はないけど、他の人が入れ替えをするための待ち時間は発生してしまう。


 現実として、まぁ、本当にそんな大量のデータがいるのかと言うのはある。マルチプレイでマップを増やしまくったところで、それらのマップの質の高さを維持できるのか。シングルプレイでマップをひたすら広大にしまくったところで、その大きさに見合っただけのプレイを提供してもらえるのか。って言うと、ねぇ。とにかく数は多ければいい、数字が大きければいい、ていう人にとっては、それだけで神ゲーだろうけども、しっかりと練られたものが必要な分だけあればいいですよ、てのが普通じゃないかと思う。そもそも作る方だって、金にも人にも時間にも限界があるものだし。結局、「高解像度の綺麗なムービーシーンがたくさん入りました」というのが、今のところではある。
 まぁ、その「必要な分だけあればいい」という「普通」が、既にゲームソフト1本にDVD1枚では足りないと言うところにまで来たという、やはりそこは変わらず問題なわけですけどもね。



 こう考えてみると、今回のE3で、マイクロソフトがGames on Demandを小さくしか発表しなかったのも、実際の商品化にはまだ時間のかかりそうなProject NATALをカンファレンスで大々的に発表したのも、頷けますね。ある一つの部分での限界が見えて来たことで、別の部分での「未来」を見せる必要に迫られたわけだ。

進化しなかった部分と進化しきれなかった部分が、これから重荷になって行くWii

 同じ問題は任天堂Wiiにもあって、これは映像のHD化ですね。すでに、発売当初からいつかは出ると言われながらいまだ姿の見えないDVDビデオ対応版は、今もう出したとしても「え、いまさらDVD対応くらいのことで、『新型』?」という時代に入りつつある。まぁビデオ対応は置いておくとしても、ゲーム部分でのHD対応は、このままずっとしないで済むとは思えない。
 そうでなくとも、Wiiモーションプラスなるものまで出るという時点で、少なくとも今売っているWiiの標準パッケージではもうハードウェア的に限界が見えたことを任天堂も認めているということ。リモコンを使って動きを検地しようって言うのに、そう言う操作のために一般的な形態のコントローラを捨ててリモコンを採用したのに、その標準リモコンじゃ機能が足りませんでした、てわけなんだから。まさかに新しいソフトが出るたびユーザーには新しい周辺機器も買ってもらいましょう、なんてできるわけがないので、どこかで一旦まとめる必要に迫られると思う。いずれはWiiリモコンを新型に切り替えて、現時点では別売りのWiiモーションプラスを標準装備にするとかね。まぁ、Wiiモーションプラスは単品1,500円の周辺機器ですので同梱は簡単にできると思いますが、HD対応は果たしてどうするつもりなのか。興味深いところ。

先取りした分の負担を、消化し終え始めたプレイステーション3

 プレイステーション3は、その点にはアドバンテージがある。初期の購入者増を狙って安価な構成にしたXbox360Wiiに対して、プレイステーション3はHD化とブルーレイディスクをはじめから両方とも備えている。HDDも、モデルによって容量にばらつきはあるものの標準装備。プレイステーション2との互換やSACD再生など、モデルチェンジによって削られた機能はありましたが、「プレイステーション3用のゲームを遊ぶ」という環境で見れば、何も影響はない。一切ブレてない。ゲーム雑誌出版社のお偉いさんや経済アナリストの中には「いずれHDDなしの安価なモデルが」だの「ブルーレイドライブを削って安価なモデルを」だの、信じられないような予測を立てた人が少し前までたくさんいましたが、今こうして振り返れば、もうバカでも分かりますね。ありえるわけがない。そして実際SCEはそんなことしなかった。
 いろいろ取り揃えた分だけ価格が高くなって最初の1,2年に大苦戦を強いられる羽目になりましたが、苦戦を予想していたのかそれでも売れるはずだと思っていたのかはともかくとしても、「ソニープレイステーション」というブランドから来るユーザーの信頼感とサードパーティーからの支持のおかげで、今はソフトもしっかり揃っている。そして、量産効果とコスト削減努力によって、かつて価格高騰と引き換えに手に入れた高機能が生きてくる。「10年売れる」て発言は、実は伊達じゃないんですね。ライバルとの競争ということで言えば、長期戦になればなるほど有利になっていく。


 もちろん、なにも欠点が無いかと言うとそうでもなく。上では「ブレてない」とか書きましたが、これは若干の誇張。ハードウェアですけども、コントローラが一度更新されている。SIXAXISからデュアルショック 3に。SIXAXISしか持っていないと言うユーザーもいるはずなので、振動機能が全モデル共通仕様ではない。
 あと、俺はPS3持っていないので実際にどうなっているのか詳しいところまで分からないのだけど、モデルチェンジでPS2互換機能が省かれたということは、PS2ソフトのセーブデータとPS3ソフトの連携も出来なくなっているんじゃなかろうか。PS2では、PS1のデータとの連携がありましたね確か。なぜかPSを作ったSCEではなくコナミが特許を取ったとかいう。それができない。
 まぁでも、上の2つは、些細なことと言えば些細。データ連携は、何か面白い仕掛けに利用できるかもしれないけど必須機能とは言えない。もし今そういったことをやるなら、PSPの方と何か連携できないか、と考えるほうが美味しい。振動は、まぁこれは演出としては結構大事だと俺は思う。攻撃したりされたりの表現と言うだけでなく、ある特定のポイントでだけ震えることでプレイヤーに何かを知らせる、みたいなね。
 でもそれ以上に重要な、PS3の場合の本当の問題は、6軸検出の無視されっぷりな。最初の頃こそ『Lair』だの『WarHawk』だのSIXAXISらしい操作のソフトを、ていう機運はあって、『Lair』なんかは、操作方法に不満を示したゲームレビューサイトのレビュアーに後日改めて詳しい操作説明書が配布されるなどフォローもしてたけど、そこから不満点を解消した新作を、という流れにまでは至らずに、結局消えてしまった。今では、別の操作でも問題ないようなのを「とりあえず対応させてみました」的にやらせてみてる、という程度のものばかりになってしまった。挙句の果てが、リモコン型コントローラを別に出しますよ、という。
 そりゃあ今からなら、Wiiでの成功例を横取りする形で、サードパーティーにもソフト作ってもらいやすいだろうけども、やはり一度は「SIXAXISの努力を放棄した」ってのはね。結構大きいと思うんだよね。出してみて上手く行かなければ、自力ではそれ以上頑張ってはみない、という根本的な姿勢の問題だから。ひっくり返す事例を示してみせない限り、この不安は付きまとう。
 まぁ、それでも、基本的な部分では他2機種に対して有利な位置にあるのは確かなので、ここでWiiの特徴であるあの操作方法も取り入れておこうとするというのは、きっと正解なのだろう。マイクロソフトのように飛ばさず、それなりに無難なとこで着地しておくのも、正解だと思う。Wiiに似ていれば似ているほど、アイデアも真似しやすくなる。相手は今のままずっと戦い続けるのはまず無理で、長引けばそれだけこちらに都合がいいのだから、変に欲張らずに、静かにちょっかいを出し続けるのが、うまいやり方じゃないだろうか。


疲れた

 なんて言うことを、Xbox360の「Games on Demandサービス開始」と「『Forza 3』は2枚組」というニュース2本から引き出してみたよ。