SF1000冊読んでない俺が非オタの彼女にSF世界を軽く紹介するための10本
まあ、どのくらいの数のSFオタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、「オタではまったくないんだが、しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて、 その上で全く知らないSFの世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、SFのことを紹介するために
見せるべき10本を選んでみたいのだけれど。
(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女にSFを布教するのではなく相互のコミュニケーションの入口として)
あくまで「入口」なので、時間的に過大な負担を伴う連続テレビドラマは避けたい。できれば1本完結、長くても3部作の映画にとどめたい。
あと、いくらSFオタ的に基礎といってもジャンル・カテゴライズで議論を吹っかけるのは避けたい。年寄りが「それはSFじゃない」と言い出しても、それはちょっとさすがになあ、と思う。
そういう感じ。
彼女の設定は
SF知識はいわゆる「ドラえもん」的なものを除けば、映画の『スパイダーマン』程度は見ている
サブカル度も低いが、頭はけっこう良い
という条件で。
まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。
マトリックス(アンディ・ウォシャウスキー / ラリー・ウォシャウスキー監督)
まあ、いきなりここかよとも思うけれど、「マトリックス以前」を濃縮しきっていて、「マトリックス以後」を決定づけたという点では外せないんだよなあ。長さも3本だし。
ただ、ここでオタトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。
この情報過多な作品について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃すぎず、それでいて必要最小限の情報を彼女に伝えられるかということは、オタ側の「真のコミュニケーション能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。
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バタフライ・エフェクト(エリック・ブレス / J・マッキー・グラバー監督)、アニマトリックス(アンディー・ジョーンズ監督、他)
これって典型的な「オタクが考える一般人に受け入れられそうなSF(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのもの。
という意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには一番よさそうな素材なんじゃないのかな。「SFオタとしてはこの二つは“映画”としていいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。
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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(押井守監督)
ある種のSFアニメオタが持ってるオタク学園ライフへの憧憬と、原作なんてどうでもええんじゃいという押井監督の姿勢を彼女に紹介するという意味ではいいなと思うのと、それに加えていかにも押井守な
「延々と続く長い独白」を喋るメガネ
「単調に流れていく背景」を写し続けるタクシー車内
をはじめとして、これ以降の押井作品にも見られる要素を世界にちりばめているのが、紹介してみたい理由。
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アンドリューNDR114(クリス・コロンバス監督)
たぶんこれを見た彼女は「ピノキオだよね」と言ってくれるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。
この系譜の作品がその後続いていないかどうかはよく知らないこと、これがアメリカでは大人気にならなかったこと、ロボットがイケメンなら連続テレビドラマになって、それが日本に輸入されてもおかしくはなさそうなのに、ああそういえば日本国内でも彼氏がフィギュアみたいなドラマあったっけみたいなこと、なんかを非オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。
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時をかける少女(細田守監督)
「やっぱりアニメは童貞オタクのためのものだよね」という話になったときに、そこで選ぶのは「耳をすませば」でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この作品を持ち上げるオタが面白いから。
宮崎駿に仕事を取られてジブリを去ってそれで角川で大成功大勝利っていうオタの喋る話の流れが、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、その「宮崎ジブリ」ということへの受け入れられなさがいかにもオタ的だなあと思えてしまうから。
時をかける少女のラストを俺自身は鬱とは思わないし、円満で分かれたんだからハッピーエンドだろうとは思う。これが完全にファミリー層・若い女性向けだったら、ラストはそれまでの話を無視しても強引に二人が結ばれる流れにして見せかけだけのハッピーで終わっただろうとも思う。なのに、現代にいるはずのない未来人はしっかり未来へ帰らせる、というあたり、どうしても「ラストに分かりやすい形で結ばれるのが当然じゃん的な都合のいいハッピーエンドを素直に受け入れられないオタク」としては、たとえ自分がそういうキャラでなかったとしても、安易に鬱鬱言うことには同意できない。作品自体の高評価と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。
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『アンドロメダ…』(ロバート・ワイズ監督)
今の若年層でハヤカワ文庫SFよく読んでる人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。
CG全盛よりも前の段階で、SFの哲学とか技法とかはこの作品で頂点に達していたと言えるかどうかとか難しいことは俺はまったく知らないけど、こういう原作小説をちゃんと尊重して映像化している作品がこの時代にはあったんだよ、というのは、別に俺自身がなんらそこに貢献してなくとも、なんとなくSF好きとしては不思議に誇らしいし、いわゆる原作無視のSFアクション・ハリウッド超大作でしかSFを知らない彼女には見せてあげたいなと思う。
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サマータイムマシン・ブルース(本広克行監督)
本広の「目」あるいは「絵づくり」をオタとして教えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。
「気の合う仲間と下らない学生生活を過ごしたい」的な願望がオタには共通してあるのかなということを感じていて、だからこそアニメ版『らき☆すた』最終話はビューティフルドリーマー以外ではあり得なかったとも思う。俺らきすた見てないけど多分そう。
「祝祭化した日常を生きる」というオタの感覚が今日さらに強まっているとするなら、その「オタクの気分」の源はどこにあったのか、という、そんな面倒なことは俺にはどうでもいいので口にせずに、単純に楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。
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ミッション・トゥ・マーズ(ブライアン・デ・パルマ監督)
これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。
こういうSF小説では割とポピュラーな話をこういうかたちで映像化して、それが非SFオタに受け入れられるか「なんか非科学的な新興宗教くさい」なんて気持ち悪さを誘発するか、というのを見てみたい。
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ダークシティ(アレックス・プロヤス監督)
9本まではあっさり決まったんだけど10本目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的にダークシティを選んだ。
マトリックスから始まってダークシティで終わるのは別に収まりがいいというものではなく、これが何かの先駆けとなった作品というわけでもないけれど、俺が好きなので紹介する価値はある。けれど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。リベリオンもちょっと迷った。
というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10本目はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。
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「駄目だこの似非SFオタ気取りは。俺がちゃんとしたリストを作ってやる」というのはやりたきゃご自由に。
こういう試みそのものに関する意見も特に募集も拒絶もしない。