位相の違い

 オタク議論で一番よくないと思うのは、位相の区分けに「世代」って言葉を使っちゃうことだよな。確かに子供の頃どんなものを見て育ったかってのはとっても重要なのだけど、第1世代だの第2世代だのって言い方だと年齢的な違いばかり強調されて、ジャンルの違いがそこに現れない。んで、知識量自慢みたいなのと結びついて、すぐ序列化が始まる。「まったく最近のオタクは」とか言う奴が出て来て、またそれに対して「これだから懐古主義の老害は」と言う奴も現れる。


 日本オタク大賞は、ゲーオタ的な自分の理想としては、ベストランキング1位で『デッドライジング』の名前が出たところで歓声と同意の頷き、クソゲーランキング1位で『男たちの機銃砲座』の名前が出たところで間髪いれず笑いが起きて欲しかった。でもそれはあくまで理想であって。Xbox360持っていなくともYouTubeニコニコ動画(β)でゲームプレイ映像くらい当然見たことあるだろとか、SIMPLE200シリーズ買っていなくとも絶対SIMPLE主義さんのレビューくらい当然読んだことあるだろとか、それはやっぱ、あくまで自分の感覚、自分の理想。同好のゲーオタ同士が集まってるネットのコミュニティでならある程度「当然」のものとして話させてもらうけど、外に出ていって通用するものじゃないことは承知してる。ましてや、あのイベントで本気でそんな展開を期待するほどこっちもバカじゃない。ほんとだよ。


 しょうがないよ。どうなるもんでもないし、誰が悪いわけでもない。要は、その空間においてどの年代どのジャンルのオタクが大勢を占めているか、と言うだけのことで。日本オタク大賞で言えば、あれはもう審査員の顔ぶれ見ればどう考えたって、ネットで活発に蠢く大半のオタクとは住んでいる位相が違う。「『ウルトラマン80メビウスの)』が大賞だなんてありえねぇ!」って人は多かろうけど、それはその人たちの趣向が審査員の趣向が合致してないというだけの事実で、それ以上でもそれ以下でもない。まー、我らオタクの代表でございみたいな名前を賞につけちゃったのはどうだろうね、ていう部分はあるけども。
 ゲームの話題があまりなかったのも、「ゲームを語る空間じゃないから」。その一言に尽きる。あのオッサンども偉そうにオタクを語ってるくせにゲームのことろくに分からねぇでやんのプププー、とかそういうこっちゃあない。若造めが仮にもオタクでありながら特撮の話に付いていけんとはけしからん、とかそういうこっちゃあない。「私はゲームなんてオタクがやるものとして認めない」とか言い出したなら容赦なく悪口雑言吐き付けさせてもらうけど、別にそうじゃない。彼らが子供の頃には、今ほどコンピュータゲームが普及してなかった。育った後も、そっちにはオタク的関心は振り向けなかった。そこは、ま、年齢的な部分も大きいか。でも、同じくらいの年齢だからって同じものを好むわけじゃないのも、皆それぞれ自身の周りを見渡せばすぐ分かる。結局、居ついた世界が違ったということだ。山の村と海の村では、生活様式が違う。考えが違う。宗教が違う。それぞれの環境に合わせた選択の結果であって、文化の優劣じゃあない。交流し理解を深め合うことは積極的にするべきかもしれないし、自分の意思で移住することもできるけど、わざわざ相手を同化することはない。それぞれの村で、気の合う仲間とともに楽しく暮らせば良い。派閥争いや陣地取り、出世競争してるんじゃないんだからね。してるんじゃ……ないよね?