字幕と吹替え

また君か。@d.hatena : 映画とゲームとローカライズ
 相手が「書き中」と言ってるのに言及するのもどんなもんかなとは思ったけど、思いついたときが書き時ということで。こっちが書いて消して書いて消してやってるうちに、どうやら完成したみたい。


 プレイステーション2の『スプリンターセル』の一作目では、これ英語音声・日本語字幕タイトルなんだけど、ゲーム中(非イベント時)で味方からの通信の字幕が表示されるのがPDAウィンドウ内なので、スコープとか覗いていて通常の画面でない状態だと、字幕が一切表示されなくなっちゃうってことがあった。スコープ覗いてるときってのは敵の動きを見ているときなんで、そんなときにいちいち画面切り替えるわけに行かない。ゲーム進行の上で重要な指示はオプション画面からいつでも確認できるので深刻に困りはしないんだけど、ごく些細なこととは言え明らかにゲームプレイに差し障っているので、とにかくそれが気になって仕方がなかった。吹替えなら、まぁ耳を傾ければ目の方の注意はある程度逸れるけど、でも画面を切り替える必要まではないわけで、つまり字幕なのか吹替えなのかってだけでもプレイに影響が出るのよな。
 だから、日本語版発売までにかかる作業の早さを考えるなら「別にLv.2くらいで良いよ」と言う気持ちは自分にもあるんだけど、ゲームプレイのことを考えると、アメリカ人が英語を聞いて遊んでるタイトルなら、日本人は日本語聞いて遊ぶというのがオリジナルのプレイに最も近いものになるわけで、やはり完全日本語吹替えってのがあるべき「正しいローカライズ」なんじゃないかと思う。


 とーは言っても、ミリタリ系のゲームなんかは特にそうだけど、英語音声のが雰囲気出るのよな。これが字幕・吹替え問題をややこしくしてる犯人だろうと思う。言葉なんて聞いて意味が分からなきゃどうしようもないもんなのに、みんなハリウッド映画で馴らされているものだから、意味が分からなくても英語で聞きたがる。また君か。@d.hatenaさんは「マニアは字幕で十分」って言い方をしてるけど、十分どころか字幕じゃないと嫌がるマニアってのも沢山いて。でもストーリーは一通りちゃんと知りたいから、日本語版を待たず海外版で済ませるまでにはならなかったりする。んで最終的に、プレイのことを考えると吹替えのが良いんだけど、雰囲気を楽しむことを考えると英語音声という、正反対の答えが出てきてしまう。
 例えばXboxユーザーなら、『Halo』のステージ3だかの冒頭でジョンソン軍曹が「行け、行け、行け」と言っているのを聞くたびに、「『go! go! go!』って英語で言ってくれたほうが盛り上がるのになぁ」と思うのは自分だけじゃないと思う。他にも「shit」とか「fire in the hole」とか、大して意味のあるわけでもないんだけども、英語で聞いてこそ盛り上がる言葉ってのがある。戦争映画での定型句。で、そういう映画を字幕で見て楽しんだ人にとっては、日本語で「行け」だの「くそっ」だの「爆発するぞ」「伏せろ」だの言われても、それは何か違う、としか思えない。意味がない。つまらない。例え聞き取れなくても、英語で言って欲しい。
 難儀なことだ。



 ところで洋ゲー流通における一番の壁は、ローカライズじゃなくて売り上げだと思う。見も蓋もないけど。ローカライズの問題も結局「洋ゲーの売れない日本市場で、どうコストを抑えるか」ってことで、ちゃんと採算取れるならどのメーカーも吹替えで即決なんじゃなかろうか。欧州向けのフランス語版とかドイツ語版みたいに。それほど詳しくないので間違ってるかもだけど、北米版とそう変わらない発売時期でもちゃんとそれぞれの言語に吹替えられて発売してるよね大体。
 そういう意味でも、洋ゲーをちゃんと採算の取れるものにしようと先のことを考えるなら、日本でもやっぱりマニア向けの字幕じゃなくて一般向けの吹替えが標準であるべきだと思う。MSKKのように、北米本社の手による海外タイトルの権利を多く持ち、そしてプラットフォームホルダーであるならなおのこと(で、実際彼らはそうしてる)。だいたい、字幕で満足するくらいのマニア層はもうとっくに洋ゲーに手を出してると思うのよ。どんなに採算性が悪くとも、とにかく今以上にずっと間口を大きくしておかないことには、もう客入ってこないんじゃないかなぁ。