プレイアブルデモ

 体験版ってのは、消費者からすると製品版を買う前に作品の出来を確かめられるとてもありがたいものなのだけども、メーカーからすると、体験版だけで満足されてしまったり、また期待通りではなかったとして製品版を買わなくなってしまうこともありうるというリスクを負ったものなわけです。だから、わざと体験版では製品版とゲームバランスを変えたりしていて、例えばあらかじめキャラクタのステータスを上げておいて製品版のプレイ時よりも簡単にしていたりする。経験値稼ぎをさせずサクサクプレイさせられる上に、もしバランスがよくないと指摘されても、「製品版ではちゃんとなってます」と言い訳が出来ますから。
 で、そんな体験版ですけども、さっきXbox360で遊んでいて、もうひとつ重大……今そうかどうかは知らないが将来的にはもう間違いなく問題になりうるデメリットに気が付いた。Xbox360ではXbox Liveに接続することでゲームの体験版をダウンロードすることが出来る。容量がバカでかい上に、ダウンロードのスピードもあまり速くないのがちょっと不満ではあるが(マイクロソフト側がサーバーが落ちない様制限しているという話もあるが、やはり利用者側の回線の太さが一番の原因だろう。同じデモを落とすのに、2時間半かかったと言う人もいれば4時間かけたと言う人も見かける)、それでも、体験版を手に入れるために雑誌を買ったりゲーム屋に行ったりという手間を省いて遊べるというのはユーザーからしてみるとありがたい。と思っていたのだが。ある一点で、この体験版の存在がとてもよろしくない方向へと変わる。それは、ハードディスクに記録されること。
 製品版のソフトは、プレイステーションや初代Xboxと同様、本体にディスクを挿入しないと遊べない。Xbox360はHDDを装備しているが、それはセーブデータやダウンロードしたコンテンツ、パッチを溜めておくもので、MMORPGなど一部の例外を除けばゲームソフトはインストールされない。ところが、体験版はXbox Liveでダウンロードするコンテンツなので、ハードディスクに記録されるのである。本体を起動したあと、ディスクを入れることなくそのままゲームを始めてしまうことが出来る。勿論、あくまでも体験版であるので内容は製品版と比べかなりの制限をされているが、それでも、体験版の性質として「遊べる」ものであることには違いないのだ。
 問題は、「ディスクを入れる」。製品版を遊ぶのにかかるこの手間である。iPodなどのmp3プレイヤーを引き合いに出すまでもない。パソコンゲームは、ずっと以前からハードディスクへのインストールをしていた。そうすることで、ディスクへのアクセスをなくし、ローディングに費やされる時間を最小限に抑えることが出来る。いちいちディスクをセットする必要もなく(コピー対策として起動にディスクが必要なソフトもあろうが、実を言うとパソコンゲームのことはあまり知らないので、細かくは突っ込まずに逃げておく)、パソコンを立ち上げたら、あとは気の向いたときにアイコンをクリックすればゲームが始められる。メリットばかりではないか。なぜゲーム機は、わざわざ不便なほうを選ぶのだ。各メーカーともそれぞれ思惑はあるのだろう。しかし、これからもユーザーはその思惑に乗り続けてくれるだろうか。次のハードが出るであろう5年先まで、果たして今のままでやっていかるのか。
 パソコンでゲームをすることは、確かに、メリットばかりでもない。汎用性があり、拡張性が高いが、それゆえにゲーム機としては各ユーザー間での互換性が保ちきれないというのは大きな問題だろう。かくいう自分も、それが嫌だからパソコンではゲームをしない。しかし、コンシューマでのゲームは、今でさえ長大なロードが不満の種になることがあり、例え遊んでいてロードがないとしても、それはロード時間が減るように製作者が頑張って作っているからである。ゲーム機の性能は上がっても、比例して読み込むデータも増えれば、ロードは変わらない。グラフィック偏重が著しい今のご時勢なら、尚更だ。だが、もしそんなに頑張らずにロードを短縮できるとしたら、どうだろう。悪くない話じゃないか。そしてそれは、ソフトをインストールするハードディスクが一つあれば事足りる。ゲームを始める度にディスクを入れる手間はなく、終わらせる度にディスクを取り出す手間もなく、別のゲームもそのまま始められ、さらにローディングの短縮。こんなおいしい話はない。


 とか何とか勢いで書いたけども、まぁハードディスクを標準でつけると値段上がりますからね。丸ごとインストールとなれば必要となる容量も膨大だし、容量が増えれば値段はさらに跳ね上がる。フォトリアルなグラフィックとスペック表の数字を追いかけ大金をつぎ込む開発競争の中で、そんなところにコストをかけていたら取り残されてしまう。それに、「インストールしておけば」と言っても、インストールにかかる時間もたいしたもの。ちょっと遊んでみたいだけなのに、最初に始めるまで数時間待たされるようなことではたまらない。その方がよっぽど億劫だ。ゲーム機のやり方にしてもパソコンのやり方にしても、それぞれ相反する利点と欠点があるわけで、だから、やっぱり今のままでも、それはそれで一つの形態としていいのかもね。


 うん。やっぱり、寝不足の頭に浮かんだことを無理矢理押し広げてエントリのネタにしてもろくなことにならんわな。