期待してたのに
ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン (初回限定豪華パッケージ仕様) [DVD]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2005/09/14
- メディア: DVD
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まぁ何にせよ、もっといろいろとツッコミ入れ放題なものを期待していなくもなかったという点では非常にガッカリな作品でございます。ごくまっとうに良く出来ていて、これといって言うようなことが別に。ええ。映画、アニメ、映像、コンピュータグラフィックスなどに興味のある方は、誰かから借りるでもして一度は確認してみていいんじゃないでしょうか。ゲーム『ファイナルファンタジー7』を知らない人でも、そう深刻な置いてきぼりにはされませんので、さほど警戒なさらずに。かく言う自分も、ゲームはディスク1の途中で止めてる人間ですのでね。まぁ、知っているほうがずっと楽しさは増すのでしょうが。
なんか物足りないので適当にもうちょっと喋ってみる。
この作品に対して「すごいリアル」と言って誉めている文章をネットでちらり見かけたんですが、正直あまり良い言い方だと思いません。確かにさまざまな物がとても細かく作ってあり、背景などでは本物と見まごうばかりのシーンもあります。その映像には感嘆のため息が止まらず、その映像を作ったスタッフ諸氏への賞賛の念を惜しむ気も毛頭ございませんが、この作品のCGで重要なのは、本物らしくすると同時に、本物になり過ぎないようにもなっているということだと思うのです。
『ファイナルファンタジー7 アドベント・チルドレン』は、2DアニメやピクサーのCGアニメと比べて非常に本物らしく作ってあることで、映像に迫力を持たせています。でも、その方向だけで突き進んではいけないのです。これは難しいところで、映画の『ファイナルファンタジー』のコメンタリでスタッフが喋っていますが、本物を観察して本物そっくりに仕上げても、必ずしも本物に見えるとは限らないのです。『アニマトリックス』の『ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス』は、素晴らしく緻密なCGで人間を描いていますが、それゆえに、肌の質感や指先の動きなどのほんの些細なことで不自然さが噴出して白けてしまう。「それはたぶん技術的に限界なんだからしょうがないよ」とフォローが浮かんだら負けです。観客はこう返すでしょう。「じゃあ実写で撮ればよかったじゃん。どうせ実写を目指して映像作ってるんだから」と。それではダメなのです。不自然さを感じさせたらいけない。
じゃあどうするか。実は非常に簡単なことで、無理に本物っぽくするから違和感や矛盾を感じるのだから、それを払拭するには「別に本物っぽくはしてませんよ」とはっきり開き直ってしまえばいいわけです。わざと作り物である感じを残して、実写ではなくアニメとして認識させ違和感をなくす。例えばティファが教会跡で戦うシーンなど見れば、これが「よく動くアニメ」として作ってあるのが分かるでしょう。
つまるところこの作品、アニメの非現実感と実写の現実感のバランスを巧みに調整して、アニメと実写のいいとこどりをしてあるのです。であるから、単に「CGがリアルで本物っぽい」とだけ誉めそやすのは、この作品への賛辞として妥当ではないと思うわけです。
これに限らず、恐らくCGアニメが実写とも2Dアニメとも違う一つのジャンルとして確立するためには、この道が最も妥当なのだと思います。で、ピンときた方もいるでしょう。これは、ピクサーがCGアニメを作るのに実践しているモットーでもあります。スクウェア・エニックスがどういう腹積もりかは知る由もありませんが、個人的には、この路線を維持してピクサーと肩を並べるCGアニメスタジオとしても活躍して欲しいなと思う次第でございます。ただ今作の場合、ピクサーと違って全世界的な映画公開などはしていない分、収益に相当に不安が残るのも事実ではありますが。大丈夫なんですかね。
つーかさ、実際のところゲームとしての『ファイナルファンタジー』のCGムービー製作の経験でスクウェアの人たちはこの程度のことはとっくの昔に分かっていたはずなわけで、なんで映画の『ファイナルファンタジー』はあんなにも実写に擦り寄ってしまったのか、やっぱり不思議でございますよ。
ゲームとOVAと
それにしても、このタイミングでこれを出してしまうと、『ファイナルファンタジー12』は下手すると「『FF7:AC』はもっとキレイなムービーじゃなかったー?」とか言われる羽目になりそうな気がするのだが。何考えなしにやってるわけじゃないでしょうが、大丈夫かの。
あといずれ次世代機で出ることになるのであろう『ファイナルファンタジー13』のCGムービーも、どうなることやら。ゲームではないとは言え今こうやって映像作品を出した以上は、それに少しでも見劣るものは絶対に出せないということでありますけど。いずれにせよその段階で最高峰のものを作らないといけないのはもう決まってるようなものではありますが、それで果たしてどれほどのお金が必要になるのだろうとか考えるだけで寒気が。『FF7:AC』はこの100分の映像だけでゲームと同じ金かかってるという噂だが……。よっぽどずば抜けた一人勝ちしてくれるハードがなきゃ、そりゃ嫌でもマルチへの移行を検討もしますわな。
というか、これ前から思ってましたけど、ここまでくるとゲームよりもこういうOVAの形式で出していったほうが儲かるんじゃないでしょうかね。ゲーム機よりもビデオ再生機の方が世界的にははるかに普及しているわけだし、少しでも多くの消費者を購買対象にできるようにと言うことでマルチにもなるならば、最終的に辿り着くのやっぱりビデオなんじゃないかなと。そもそも『ファイナルファンタジー』に限らず今のゲームはムービー部分が極度に肥大しているわけだし、それならばいっそゲーム部分をばっさり切ってムービーだけになるというのは、映像作品としてはあながち間違った進化ではないと思う。まぁ、ゲーム部分で演出するストーリーや遊びというのもあるし、ゲームとしてのプレイ時間と映像作品になった場合の尺の差も考慮するならば、単純に「ゲーム」と「ムービー」で切り離して成立するものでもないだろうけど。うーん。どうなるのかな。
ついでに
本編も確かに素晴らしかったんですけど、一番興味を引いたのは実はゲームの『ファイナルファンタジー7』のダイジェスト映像だったり。やったことのある人にざっと思い出してもらうためのものらしく、結構色々と説明が省かれている印象ではありますけども、なかなか面白そうだなと。まぁずっと昔に一度やって途中で止めた経験があるんで、実際にまた手を出すにはちょっとプッシュが弱いですがね。ただそのダイジェストを見ていて改めて思ったのは、今の小奇麗な八頭身キャラクタよりも、サターンやプレイステーションの時代のポリゴンキャラクタの方が個人的には味わい深くて好きだなぁということでしょうか。