デイ・アフター・トゥモロー [DVD]

デイ・アフター・トゥモロー [DVD]

 999円も積み重なれば安くはない、と分かってはいても、1本1本が安いのでつい買ってしまう。近所にレンタルビデオ屋がないのがいかんのだ!
 結論から言えば、「金かかってるなー、とは思うけど、そのわりには……」という感じか。割と地味って言うか。相手が自然現象だから結局人間はそれが収まるのを待ってるだけしかできないわけで、『インデペンデンスデイ』とか『アルマゲドン』とかにある「破壊」や「人類生存に向けた決死の反抗」みたいな盛り上がりがさっぱりない。大寒波だって人の命に関わってるのは間違いないんだが、絵的にはただ人や建物が白っぽくなるだけだからなぁ。うぅむ。


 とはいえ、絵的なインパクトに関しては元々期待なんかしてなかったので実はどうでも良くて、むしろ破壊的・反抗的要素がないと思ったからこそ見てみようと思ったというのが本当のところ。つまり、地球規模の異常気象で気温が下がっているのなら人間などにはもうどうしようもないわけで、なんだかんだ言いつつも隕石やエイリアンの宇宙船を壊しさえすればハッピーエンドになるような簡単な話にはなりえないわけだ。まぁ、ハリウッド映画なので果たして何をやるか分かったもんじゃないという不安はなくもなかったが。それでも、筋立てとしては概ね予想通りだった。
 ただ、あれこれ詰めすぎて全編に渡って急ぎ足な印象なのは不満。ついでに言えば、北半球だけなんてちゃっちい事は言わずにいっそ全世界氷に閉ざされて(参考:全球凍結)、どうにか生き残りはしたけどこれから一体どうすれば……なんて叫びと共に終わったほうがよっぽど楽しかったように思う。いや、もっと言うなら、むしろそこからがこそ面白くなるところのような気もする。更に言うならば、何世代もあとになってようやく氷が解けて埋もれていた都市が再び姿を現したときに、氷の世界で生まれて育った世代の奴らがその遺物に接してカルチャーショックを受けるような作品ならなお良し。ていうか、もうどうでもいいから、ホーガンの『星を継ぐもの (創元SF文庫)』『ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)』を連作で映像化してくれ(個人的に『巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))』は正直どうも巨人三部作の中でも蛇足的な印象が拭えないので、ここでは外させてもらう)。もちろん出来る限り原作に忠実に。異文化接触とその衝撃こそがSFの花! なんてな。まぁ、「アメリカ人とそれ以外の人たち」という認識しか出来ない今のアメリカンには到底作れるわけもねぇか。勿体無い。今のハリウッドはネタがなくて困っているそうだが、アメリカ人作家が今まで書き上げてきた数々の有名な小説を映像化するだけでもたいしたものが出来るんだから、むやみに手を加えたりせずに素直にやっときゃええんじゃ。


 また話がずれた。
 あと、もうひとつ。ラストになって環境破壊だの何だのって言う「いかにも」な演説が付いたのはあまり感心はしない。そういう綺麗ごとは、うまいタイミングで言いさえすれば大いに盛り上がるが、空気を読みそこねて吐こうもんなら今までの全てが台無し。監督以下、全スタッフは今からでも『沈黙の要塞 [DVD]』を百篇見ておけ。ああいう取ってつけたような演説をやっていいのはセガールだけ。