階段を上るのに自分なら一度に何段まで抜かしてもいいのか、それを知らないなら飛ばしてはいけないよ。転ぶからね。

 『テイルズオブヴェスペリア』の経験値販売は、ユーザーのプレイの意欲を削ぐとか、メーカーが自らゲームのバランスを崩してるという意見もあり、人それぞれ、いろいろ考えさせられることも多いようだ。

東京魔人學園 剣風帖』、発売2日でレベルMAXへ

 それと関連して、というわけじゃないけれど、木曜に買ったニンテンドーDSの『東京魔人學園 剣風帖』、木曜の時点で第一話は終わらせてあったのだけど、そういえばこのソフト最初の戦闘からレベルを稼ぎまくる方法があったなーというのを思い出して、一度データ初期化してやってみた。


 方法は非常に簡単で、敵に主人公を攻撃させ、ダメージを負った主人公がそれを初期状態から習得してる回復技で回復するだけ。具体的な手順としては、

  • 戦闘が始まったら、主人公だけを前に出して敵に攻撃されるようにする。
  • 周囲の雑魚は、この時点で唯一の仲間である京一に倒してもらう。
    • 別に主人公が倒してしまってもいいのだけど、回復技のない京一は同じ方法をとって経験値稼ぎができないので、譲っておいた。
  • ダメージを負ったら、回復技を使って回復。
    • このステージでは、雑魚とボスに取り囲まれてたこ殴りにされるとかでもなければ1ターンで死ぬことはまずないと思うので(たこ殴り状態になってももしかしたら大丈夫かもしれない)、毎ターンちゃんと回復しておけば問題ない。
    • 行動力満タン20に対して、この回復技に必要な行動力が10なので、1ターンに最大2度回復できるが、この時点だと1度使えば全ダメージ回復してしまうので実質1ターン1回。
  • 回復技でダメージを回復するたびに経験値が30入る。
    • 普通こういうレベルアップシステムのあるゲームの場合、レベルが上がるたびに次のレベルアップに必要な獲得経験値はどんどん増えていく。レベル1から2に上げるのに必要な経験値が10だとすると、L2からL3に上げるには経験値30、L3からL4に上げるには経験値70、みたいなね。それにより、一箇所にとどまって経験値稼ぎをし続けるプレイの効率を悪くし、「レベル上げをするにしても、とにかく先に進みましょうよ」とユーザーを促すわけだ。
    • ところが、このゲームは常に「レベルアップに必要な経験値は100」なので、かなり楽に上がっていくようになっている。これがポイント。これがなかったら経験値稼ぎなんてしようと思わない。
  • 雑魚をすべて倒した京一は攻撃対象にならないよう離れておき、ボスと主人公が一対一の状態を作り出す。ボスは吹き飛ばし効果のある技を持っているので、吹き飛ばないようマップ端に主人公を置く形で。
    • ここのボスが技を使ってきても一撃で死ぬようなことはなく、一度の回復で全回復可能なダメージしか出ないので、安心しよう。
  • あとはひたすら、攻撃される、回復、攻撃される、回復を繰り返す。
  • 目標レベル(今回の俺のプレイでは上限)に達したら、ボスを倒して戦闘終了。
    • 必要があるわけでもないけど、雑魚の時と同様、京一に譲っておくのが良い。
    • レベルアップで覚えた主人公の最強技で倒してみてもいいけど。

 これだけ。戦闘アニメーションをオフにすれば、敵のターンは数秒で終わる。こっちも主人公が回復技を使うだけなので、そのたびにボタンを押さなければいけないが、10秒も使わない。
 俺のプレイだと、2時間弱・約330ターンでレベル99になった。これがこのゲームにおけるレベルの上限。攻撃力と防御力は255、精神力は99でカンスト、技は全部で12覚えるが(初期状態では3つ)、これらはレベル99になる前に達成され、最後は生命力(HP)が上がるだけになる(精神力はアイテムを使って更に上げることはできるらしい)。行動力はレベルに関係なく20固定だった。そうだったっけ。プレイステーション版のこと、もうよく覚えてないのでな。


 どんな光景だったのかと考えると、非常に恐ろしいよな。主人公の助っ人に来た京一はほぼ傍観。ここの敵はボス・雑魚ともに、絡んできた同じクラスの不良たちなわけだけど、主人公をどう殴っても引っ掻いても、即座に何事もなかったように立ち直る。そのうち、何もしてない主人公が、どんどんたくましくなっていくんだぜ。殴られれば殴られるほど強くなっていくみたいな。ただの不良に殴られるだけの戦闘で、氷を出す技、炎を出す技、挙句には最強の秘拳まで習得していく主人公。まー、設定的にもこの時点で主人公はすでに「覚醒」していたと思うので、それほどおかしくはないのだろうけど。けど!



 このゲームを作った監督さんはどうやら、このゲームのシミュレーションパートは意図的に簡単にしているようなので、こういうやり方もできると認識した上で「やりたければどうぞ」としているのだろうけど(10年前のゲームの移植で、そのままになっているわけだしね)、2時間でレベルMAXてすごい効率だわな。
 ゲームが違うのでアレだけど、いま話題の『テイルズオブヴェスペリア』がレベル10上げるコンテンツを450円、レベル5上げるコンテンツを300円で売っていたというのをそのまま換算すると、レベルを98上げた俺は、2時間で「レベル10UP × 9」 + 「レベル5UP × 1」の、計4,800円稼いだわけだ。販売価格がだいたい定価1割引の家電量販店とか行けば、新作DSソフトが1本買える。任天堂販売のソフトなら定価(だいたい4,800円だよね?)でもそのまま買える。時給2,400円。すごい話だ。


 ただ、まー、なんだ。自分でやっておいてなんだけど、本当にそれは効率がいいのかって言うなー。「レベルを上げる」という一点だけを考えれば効率がいいのは確かだけど、ゲームのプレイとしては果たしてどうなのか。敵を倒しているわけではないから金もアイテムも手に入らないし、習得した技がどういう効果なのか一度も使えてないから掴めてない(ステータスですべて確認はできるけれども)。
 普通のプレイだと、ちょっとずつレベルが上がって、技を覚えて、そのたびに試しに使ってみて「ああ、これは使えないな」「これは使えるな」と判断していくわけだよ。それで自分なりの戦い方に組み込んでいく。「密集している時は効果範囲の広いこの技」「目の前の敵が縦に並んでいるから、この吹き飛ばし効果の高い技で行こう」。でも、俺はこれからそれを確かめていかなきゃいけない、だけどレベル99てことは、普通に技使うとおそらく、ほとんどの敵は一撃で敵死ぬわけだよな。もう効果を確かめるも何もない。出せば死ぬ。よっぽど強いボスとか出てくるくらい進むまで、主人公はバランス無視の「最強無敵」というコマになってしまったわけだ。セル相手にスーパーサイヤ人になるのと、ヤムチャ相手にスーパーサイヤ人になるのとでは、わけが違う。違いすぎる。それは、どうなのか。

テイルズオブヴェスペリア』経験値販売の話……

 『テイルズオブヴェスペリア』の経験値販売も、もちろん、スタッフはそこを考えただろう。自分らでゲームバランスを考え作ったのだから、そこらのユーザーなんかよりよっぽど考えてるに決まっている。で、レベルを5上げるコンテンツと、10上げるコンテンツの2つを出したわけだ。まぁ、価格的に10UPの方がお得になってしまっているあたりが非常にアレだが、「ちょっと時間を節約してレベル上げたいけど、一気に10も上げたくない」というユーザーのことも考えてはいると言える。好意的に見ればな。


 ていうか、よく考えたら俺はテイルズオブシリーズをやったことなくて、『テイルズオブヴェスペリア』も積んだままで、技の習得や使用といった関係のシステムをよく知らないので、そこに話を持っていくのはよくないな。

……はやめて、ゲーム改造の話

 こないだの記事PARについて触れた。うかつに使ってゲームがつまらなくなったこと。俺がああいう改造ツールを使わなくなったのは、それが理由のひとつだった。
 せっかくプロが作ったルールを改変しバランスを壊すのだから、それが面白くなることなんて、めったにないのだ。よっぽどうまく改造しないと。改造コードを集めた雑誌の編集者のコラムで、「『FF8』で雑魚が出てこない改造をして速攻クリアしたんだけど、つまらなかった。最近の『FF』はやっぱりだめだー」見たいな事が書かれているのを見たことがある。その人にとってはFFはストーリーを追うものであって戦うものではなかったのかもしれないが、しかし当時それを見た俺は、「ゲームをつまらなくしたのは、雑魚が出ないよう改造したお前なんじゃないか」と思い、そしてはっと、改造の愚かしさ・難しさを思い知った。つまり、改造する方にも「楽しめるバランス」を作り出すセンスがいるというわけで。それができないならステータス改造なんてしてはいけないのだ。俺は、改造をやめた。

君のセンスは、輝いているか

 改造じゃなくても結局、話は同じだった。上で書いた『東京魔人學園 剣風帖』がまさにそうで、いや、時間さえ厭わなければ、どんなRPGでも同じようなことはできる。序盤のステージにとどまってひたすら経験値稼ぎ。普通は効率が悪すぎる・時間がかかりすぎることに気がついて、ある程度のところでやめる・飽きるわけだが、それは「やらない」のであって、「できない」わけではない(プレイヤーがそう思うようにわざと作ってある、てことなわけだけどね)。
 経験値稼ぎでなくとも話は同じで、がんがん前に突き進んで「でやりゃあああ」っと敵をぶち倒していき遊ぶよう作られたゲームで、離れたところからちまちま攻撃していくプレイをしても、多分それほど楽しくない。柔軟なプレイをできるように作られてないそのゲームが悪い、と言うこともできるが、プレイヤーの遊び方がよくないと言うこともできる。
 「そのゲームは」、どうやって遊べば楽しいように作ってあるのか。「自分は」、どういう風に遊べれば楽しいと思うのか。その両方を把握して、はじめて「じゃあどうすればいいのかな」とセンスを発揮すべき場面が出てくるのだが、ところが厄介なことに、その二つを把握しても、実践はまた別だ。誘惑が待っている。

「楽なこと」と「楽しいこと」

 ゲームのプレイにおいて多くの人が意識するのは「効率のよさ」だろうが、これも上の方で書いたとおり、効率がいいから楽しいとは限らないし、何について効率がいいのかと言うのをよく考えないと、進むべき道を間違える。前に取り上げたこれがいい例だろう。俺は『ファイナルファンタジー2』はやったことがないのでよく分らないが、目の前の「楽」に飛びついて、みすみす「楽しさ」を逃すこともありうる。ようだ。
 『テイルズオブヴェスペリア』の経験値販売に対して(他のゲームのアイテム販売とかでもいいけど)過剰に動揺している人は、多分、意識してかしてないかはともかく、それに対する不安があるのだと思う。そんなことをするのは不道徳である・プレイヤーとして堕落であると思う一方で、しかし、じゃあ自分は決してそれに手を出さないぞと断言ができない。「そんなのはよくないやり方だ、自力で獲得するものだ」と思う程度にプライドはあるが、悲しいかな、自制する自信がない。金さえ払えば手間をかけずに楽ができるのなら、いつか自分もそれに手を出してしまいそうだと、そう思う自分がいるのを感じているのではなかろうか。
 だって、嫌なら買わなければいいことなのだ。上の方で俺は、『魔人學園 剣風帖』で自分でレベルをMAXにするプレイをしておきながら、それは良かったのかなぁみたいなことを書いた。読んだ人はきっと「いや、よかったのかも何も、自分でやりたくてやったんだろう、お前。いまさら何を言ってんの?」と思ったことだろう。それと同じだ。嫌ならば、疑問に思うならば、納得できないならば、買わなければ良い。やらなければ良い。メーカーがコンテンツを販売したからといって、ユーザーにそれを買う義務が発生するわけでもない。いらないなら買わなければ良い。無視すればよい。金を使わず、堕落もせず、悩む必要もなく、万々歳だ。そうしないのは、できないのは、「それ、なんか楽できそうで良いな」と羨む心があるからだ。俺がレベルMAXにしたのはそうだ。「ここでMAXにしておけばこの先の戦闘が楽になるだろう」という思いが、「本当にそれでいいの?」という疑念を上回った。その結果があれなのだ。


 分りきっていることだが念のために言っておくと、どうとも思わない人だっている。「楽に経験値が稼げるならそれでよい」「メーカーが自分で経験値を売っているのだから必要に応じて買って何を気にすることがあるのか」「ステータス改造で無敵になったってそれはそれで楽しい」。それは、間違ってはない。プレイしてる本人が楽しめることが最も重要であって、世間がそれをどう思いケチをつけようが、関係ない。まぁ、何かにつけて「あーいうやり方はよくないのに、やるバカがいるんだよなー」なんてこをグチグチ言われてちゃ、まったく気にするなというのはむずかしいところだが、でも、その場合に正しいのは「楽しんでいる方」であって、本人が何をどう自負を(勝手に)していようが「他人に文句をつけてる方」ではない。決して、ない。それは確かだ。
 オンラインでの対戦や協力、ランキングなど他のユーザーにも影響が出てくるような場合は、この限りではない。もちろん。

 遊ぶのは大変だ。どのように組まれたルールなのかを把握し、そのなかでどうすれば自分が楽しめるかも把握し、そこから外れて盛り下がらないようにする自制も必要だ。人と人との対戦ゲームなんかになると、各プレイヤーがそれらを行い、更に互いに擦り合わせまでしなければならない。
 テレビゲームでは、そういったことをプロのゲーム製作者が取り仕切り、ユーザーがいちいち考え込まなくて良いようになっている(テレビゲームに限ったことでもないけど)。でも、プロの誘導だって、万全ではない。すべての人がそれに納得できるわけでもない。じゃあどうすればいいかといえば、市井の一プレイヤーとしては、己を見つめることである。「このゲームは」ここがダメあれがダメそこが気に入らないと文句をつけるのはたやすいが、その前にひと呼吸おき、「自分が」そのゲームに対して今までと違うアプローチをすることもできるのではないかと考えて落ち着いてみるのも、悪くない。
 楽しむためにゲームをやっているのであって、文句を言うためにやっているのではないはずだ。ネットでは文句を言うために「ゲームを見」る人は多いようだが、「ゲームをやっ」てないのならそんなのは勘定に入れることもない。ゲームはやって楽しむもので、その遊び方は各プレイヤーに委ねられている。そして、楽しめた奴こそが勝ち組で、楽しめない奴は負け組だ。どんなに勇ましいふりをして群れを作って吼えたところで、負け犬は負け犬でしかない。俺はむざむざ負ける気はない。お前らはどうなのだ。