短編アニメ

 チャゲ&アスカの曲のプロモーション映像として作られたジブリ作品があるのは知ってましたけど、実際に見たのは初めてでした。『On Your Mark』。すげぇ。もっと早く、見るために行動を起こしておいても良かったな。キャラクタの走り方とか、タバコの持ち方とか、煙の吐き方とか、素晴らしく宮崎ジブリど直球。


 で、問題はだ。あの物語をどう解するか。wikiに書かれている情報では、どうやら曲に合わせて映像を継ぎ接ぎしたもののようで、急にシーンが飛んだり繰り返されたりするのはその要因も大きいと思うのだけれども、さて……。装甲車(?)が落ちていったあとに今までのシーンがダイジェストで回想されて、その結末で、今度は車が落ちずに飛ぶところ。さてどうしたものかと思わず腕を組むのはここだな。基本的には曲のサビの繰り返しにあわせて映像も繰り返されたということになるのだろうが、作品内での解釈とすると、やはり何らかの力によって時間が巻戻って、彼らが死なずに生き残るパラレルワールドが形成されたと見るべきなのだろうかね。うーん。しかしそうすると、少女を助ける辺りでも起こっている映像の繰り返しやシーンの飛びは一体何を意味するのかという問題になるのかなぁ。わからんちん。あーあと、あれは地表が放射能に汚染されて人々が地下で生活している世界らしいんだけども、となると、あの外の世界に出た二人の結末ってのは、やっぱそうなるのかね。さっき幾つかのサイトで感想を見て来たら、最後に二人の乗った車が道を少し外れて止まるのは二人が放射能で……という表現と受け止めている人が多かった。自分としては、近未来SFのある種のお約束として、放射能汚染なんてのは行政府の流した嘘っぱちで本当は外の世界は清浄に違いないと解釈していたのだが、でも確かに、そこここに警告のマークがあるし、それが全て嘘である必然性はないんだよね。うぅむ。これもやっぱり分からんな。
 でも。そこがいいと思うんだよね、この作品。何の説明も台詞もなくて、ただ映像だけで進んでいく。基本的な物語の進行はそれでも十分に分かる。「二人の男が羽の生えた少女を救い出し、彼女がいるべきところであろう空へ返すお話」。でもそれ以上のものをそこから引き出そうとするとどうしても見る側が頭を働かせてあれこれと理屈をこねてみなくちゃいけなくなるわけで、その解釈のための作業が面白いんじゃないかと。「曲に合わせて適当に継ぎ接ぎしただけだ」、「深読みなどせずにそのまま映像を見て面白いと思えばいい」と言ってしまえばそれまでで、それもまた一つの受け止め方であるけども、いや、せっかくこうやって目の前にうまそうな料理が出されたのに、そのまま流しちゃうにはあまりに勿体無いし。ね。どう調味料を振りかければさらにうまくなりそうか、考えてみるのもまた一興じゃないかと。
 あのアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のヒットってのも、そういう解釈作業の楽しさってのがあったんじゃなかろうかなぁ、と強引に結び付けようと思ったけどやっぱりそれは色々と怖いのでめておくことにしたいのでこの一文はなかったことに。