せっかくサターンを繋ぎなおしたのだからと言うことで、収録されていたムービーを気に入って昔よく再生していた『BAROQUE REPORT』を引っ張り出してきて鑑賞。『バロック』の販促用非売ディスクで、一般にはゲーム店で配布されたものだが、自分は確かゲーム雑誌での当選者50名の懸賞に応募して当たったのだったと思う。
 で、そのディスクに収録されている異形のポリゴンモデルを見ていて、これまたふと「ああ、そういえばこれが原点だったな」と気がついた。
 江戸川乱歩の『孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)』や横溝正史の『悪霊島(上) (角川文庫)』、『悪霊島(下) (角川文庫)』を読んでいたとき、作中に登場する結合双生児に非常に興味を引かれていた。これは障害者の方には非常に申し訳ないのだが、正直言うと、その手の身体的欠陥は本来好きではない。手足がない程度ならともかく、それ以上の欠落や、ないはずのものが付いているといったものは、もう反射的に不快な情が湧いてしまう。ところが、なぜか結合双生児にだけは妙に興味を引かれていて、大学で昨年受講した『孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)』をテキストとした講義でも年度末の発表は結合双生児に関してだった。まぁ、嫌悪と興味は「普通でない」という点で一緒の感情でたぶん表裏一体なのだろうとも思うのだが、しかしやはり結合双生児にだけは他とは違う引かれ方をしていた。何故かはよく分からん。
 で、『BAROQUE REPORT』を見て思い出したのは、そういえば最初に興味を引かれた結合双生児が、この『バロック』に出てくるヨハンナ・キョンだったことだ。やっぱり何故かはよく分からない。でも、この不思議なモンスターに引かれて、ブラウン管をじっと見つめていた記憶だけはある。理由は分からない。


 ちなみに、実は『バロック』そのものはまだプレイしたことがないので良く知らないのだが、どうもヨハンナ・キョンはただ二体の人型が寄り添っているだけで、結合しているわけではないらしい。ここの異形紹介にはそう書いてある。ふぅむ。


 ところで、結合双生児に関してひとつ不思議だったんだが、結合双生児をシャム双生児と呼ぶのはなぜ今でも許されているのだろう。手元にある英和辞典(ジーニアス第二版)にも、はっきり『Siamese twins』と載っている。卑語を表すマークもない。あくまでも有名な結合双生児がシャム(現在のタイ)出身だったから付けられたもので別に侮蔑的意味はないとは言うが、それでもやっぱり特定の地名が用いられるのはどうにも腑に落ちない。タイ以外でも結合双生児は生まれるし、タイに結合双生児が特別多く生まれるわけでもない。なのに、なぜ。現在の国名じゃないからか? アメリカなんてそういうことには厳しそうなのに。
 と思ったら、どうも今googleで調べたらシャム双生児は少なくとも日本語としてはれっきとした差別表現らしい。ふむ。使ったジーニアスが古かったか。今は第三版が最新だっけ。それとも、このレベルの字典じゃもう用をなさないということなのか。はたまた、問題は日本語であって英語としては問題がないのかな。ていうか英語と日本語は別に考えなきゃいかんかと今さら気がついて新選国語辞典第七版を引いたら、シャム双生児は項そのものがなかった。ふぅむ。Excite辞書goo辞書infoseek辞書で検索してみたら、項は出るが差別的意味合いに関しての説明はない。どっちなのだろ。差別用語の解釈や規定などは人(組織)それぞれであるが……それでいいのかな。むぅ。あれもダメこれもダメと言われると反発するくせに、決まっていないとそれはそれで不安になると言う。いやはやなんとも情けないことですな。お恥ずかしい。